登録販売者コウペイが教える市販薬の選び方

市販薬について、新人登録販売者やドラッグストアで買い物をする方などに、出来るだけわかりやすく解説する記事を書いています。時には書評記事も。

原因から学ぶー胃痛の仕組みと対策ー

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私個人はあまり経験がないのでイメージしにくいけれど、胃の症状としては主に、

胃痛

胃もたれ

胸やけ

の3つがあると思う。

 

胃薬をご案内するには、ざっくりとでもいいから仕組みを理解していることが必要だと個人的には思っている。

 

まずは胃痛の仕組み

多くはストレスが原因だが、

きっかけは何にしろ、自律神経の乱れで起こる事が多い。

◆副交感神経→過剰な胃酸分泌

◆交感神経→胃の血管を収縮→胃血流を減らす→(を守る)胃粘膜分泌を減らす

 

要するに胃痛とは、

胃酸が胃の粘膜を傷つけている状態。

 

原因が胃酸なら、対策は主に2つ。

①胃酸の分泌を抑える

②胃酸から胃を保護する

 

胃酸分泌を抑える市販内での選択肢としては、

h2ブロッカー(ファモチジンなど)

m1ブロッカー(ピレンゼピンなど)

抗コリン薬(ブチルスコポラミンなど)

の3つ。

簡単に言えば、自律神経のせいで生じている胃酸分泌なので、自律神経を伝達する物質をブロックする成分となる。

 

この3つは、それぞれブロックする受容体が異なるだけで作用は基本的に同じと思っていいだろう。

ただこの中で最もよく効くのはh2ブロッカーになるので、症状が強いならh2ブロッカー、と覚えておくといいかもしれない。

 

例としては

h2ブロッカー:ガスター10

m1ブロッカー:ガストール

抗コリン薬:ブスコパン

がそれぞれ代表的。

 

ただし、ガスター(h2ブロッカー:ファモチジン)は第一類医薬品で、薬剤師がいないと買えない製品。

そういう場合はガストール(m1ブロッカー:ピレンゼピン)を代用として購入する選択肢もあるだろう。

〈成分〉

ピレンゼピン47.1mg

メタケイ酸アルミン酸マグネシウム900mg

炭酸水素ナトリウム1200mg

アジアスター30mg

 

ガスター10ファモチジン単剤なのに対し、ガストール胃保護修復成分や消化酵素もプラスされているので、効果の比較は難しいとも言われる。 

 

また、同じピレンゼピン製剤としてパンシロンキュアSPがある。

〈成分〉

水酸化マグネシウム450mg

合成ヒドロタルサイト780mg

沈降炭酸カルシウム900mg

アルジオキサ150mg

ピレンゼピン46.9mg

炭酸水素ナトリウム240mg

チンピ末300mg

 

ピレンゼピンの量は殆ど変わらないし、胃保護成分の種類は多い代わりにそれぞれの量は少ない。

ガストールと違って消化酵素がなくて、代わりに胃を元気にする生薬チンピが配合されている。

どちらが効くというのはやはり難しい問題なので、あとは店頭の値段などで選ぶしかない。

 

抗コリン薬ブスコパンブチルスコポラミンは、生理痛専用薬エルペインにも配合されていて、胃腸や子宮の過剰な収縮を抑える成分でもあるため、キリキリするタイプの胃痛に効果的と言える。

使い分けとしては、

◆食べすぎ、飲み過ぎ、ストレスなど複合的な要因があって、症状が強いならガスター10

◆薬剤師がいない時、胸やけや胃もたれなど胃痛以外にも症状がある時はガストール又はパンシロンキュア

◆主にストレスが原因ならブスコパン

で充分だろう。

次に、②の胃粘膜を保護修復する成分。

前回も紹介したが、これがかなり多く出回っている。

 

代表的なものとして、

スクラルファート:スクラート

テプレノン:セルベール

MMSC:キャベジン

などがある。

 

この中で最も胃の不調に対して推奨できるのは

スクラルファート

となる。

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①の受容体ブロッカーの中でも、第一類医薬品で最も強い作用を誇るガスター10と比べても劣らないとされているほど。

 

スクラルファート1500mg配合なのはシリーズ共通なので、どれが効き目が劣るということはないが、緑のスクラートSは生薬中心で、どちらかと言うと胃もたれが強い時にオススメかもしれない。

 

胃痛を含む症状が強めな時は青のスクラート、と覚えておくといい。

 

ただし、青のスクラートは錠剤と散剤で成分が異なり、消化酵素が配合されているのは錠剤のみとなっているので、そこは注意が必要。

 

ざっくりと成分を比較すると、

●スクラート錠剤スクラルファート+他胃保護成分+制酸+消化酵素

●スクラート散剤スクラルファート+他胃保護成分+制酸

(様々な胃の不調に特化)

※どちらもロートエキス配合。

●スクラートSスクラルファート+健胃生薬7種+制酸+消化酵素

(特に胃もたれに特化。

錠剤と散剤の違い無し)

 

●スクラートGスクラルファート+胃保護成分+健胃生薬2種

(水無しで飲みたい人に)

 

次に、前回も紹介したセルベール(テプレノン)

スクラルファートのように強い成分ではないが、特に注意事項がなく、安心して使える成分なので、症状がそれほど酷くないならまずこれから試してみるのもいいだろう。

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痛み止めや風邪薬などで胃が荒れるという方は、セルベールと一緒に服用することも可能。

成分が多く配合される他の胃腸薬は、風邪薬の効き目を邪魔する可能性もあるが、セルベールにはそのような心配はないので安心だ。

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キャベジンの主成分・MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)

この成分自体はテプレノンと同じように注意の要らないものではあるが、キャベジン自体が総合胃腸薬であり、以下のように様々な種類の成分を配合しているため、風邪薬などとの併用はあまりお勧めしない。

 

MMSC炭酸水素ナトリウム

炭酸マグネシウム

沈降炭酸カルシウム

ロートエキス

ソヨウ乾燥エキス

センブリ末

ビオジアスター

リパーゼAP12

 

ご覧のように総合的な成分の胃薬なので、胃痛•胃もたれ•胸やけといった様々な胃腸症状に有効なのは違いない。

ただし、総合胃腸薬としてよく効くのはスクラートの方。

 

とにかくよく効くものが欲しい人→青のスクラート

様々な症状に効くものが欲しい人→

キャベジンなど総合胃腸薬

マイルドなものが欲しい人、痛み止めと併用したい人→セルベール

 

ひとくちに胃痛と言っても、様々な選択肢があることがお分かりいただけただろうか。

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次回は胸やけについて書きたいと思う。