登録販売者コウペイが教える市販薬の選び方

市販薬について、新人登録販売者やドラッグストアで買い物をする方などに、出来るだけわかりやすく解説する記事を書いています。時には書評記事も。

餅を食べるとできる?口唇ヘルペスにステロイドを使って良いの?腫れや痒みに効く市販薬

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医薬品売り場で作業中、口のところに炎症ができたと訴えてきた年配のご婦人がいた。

 

ヘルペスみたいなのができて…」

と言われたので、ヘルペスの薬は薬剤師がいなければ売れない事をまずお伝えした。

 

お薬の資格を持っていたり、ドラッグストアで働いている人なら知っていると思うが、市販のヘルペス薬であるアラセナ第一類医薬品となっている。

 

ドラッグストアには、薬剤師医薬品登録販売者がいて、後者であれば営業中は常駐しているが、前者は病院の空いているような時間帯しか勤務していない事が多い。

 

一番よく訊かれるのがロキソニンで、これも第一類医薬品。

土日や夜遅い時間にドラッグストアを訪れ、ロキソニンを買おうとして断られた経験のある人も多いのではないだろうか。

 

登録販売者だけでは法律上、リスクの低い第二類や第三類医薬品しか売れないのである。

 

そしてこの日は土曜日で調剤薬局はお休みだったし、平日だったとしても、アラセナは「再発治療薬」となる。

 

つまり、一度病院でヘルペスと診断された事がある人にしか販売できないのである。

そう説明しようとしたのだが、よく話を聞くとどうやらヘルペスではないらしかった。

このご婦人は、意味も知らぬままにヘルペスという言葉を使っていたようである。

「餅とか、カロリーの高いものを食べるといつもできるのよ〜。

いつもベトネベートっていうのを使ってたの」

 

餅を食べるとできる?そんな事があるのか、とこれは正直初知りだったけれど、これが本当ならヘルペスではなく、別の要因による唇の炎症に過ぎないと考えられた。

ドラッグストアのお客にありがちなもので、商品名はうろ覚えであり、本当に使っていたのがベトネベートなのかどうか定かではない。だが単なる炎症であれば強めのステロイドを使ったベトネベートでいつも治っていたというのは得心がいく話ではあった。

ただベトネベートにも2つあり、ベトネベートNの方は抗菌剤入りである事を説明した。どちらを使っていたのかは流石に覚えていないようだった。

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ステロイドには免疫抑制作用がある為、もしヘルペスだった場合は症状を悪化させる可能性がある。まして、strongのステロイドを唇なんて皮膚のデリケートな部分に塗るのは、私の立場としては推奨できない。

 

もちろん決めるのはお客様ではあるが、ステロイド以外の選択肢も提示させていただいた。

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モアリップであれば、炎症を抑えたり、組織を修復する成分が入っているだけなので、もしヘルペスだったとしても悪い影響はない。

治らなくてやっぱりヘルペスかなぁとなったら受診すれば良いだけである。

 

ただし、無論炎症に対する作用はステロイドに比べて弱い。

痒みが強いとのことだったので、抗ヒスタミン成分が入っているムヒソフトGなども紹介した。

唇用ではないが、デリケートな部位にも使える製品ではある。ただ、剤形として唇には塗りにくいかもしれない。

 

ベトネベートとどれがいいのかしらと迷っていたが、これがいいと決める権利は私にはない。

結局、塗りやすそうなモアリップを選び、これを使ってみると言って購入された。