肩こりに効く市販薬は?漢方、湿布、磁気、どれがオススメ?
冬に入って以来、風邪薬よりも痛み止めを買っていかれるお客が多い。
何故この時期に?と思ったら、
寒さで肩こりが酷いのでは?
と同僚。
確かに解熱鎮痛薬の効能欄には肩こりや腰痛があるが、肩こりなら痛み止め以外にも選択肢がある。
そこでこの記事では、肩こりに効果的な市販薬について紹介したいと思う。
漢方
特に寒さで血行が悪くなって生じる肩こりなら、身体を温める漢方薬がお勧めできるだろう。
①葛根湯
寒気のする初期の感冒に効く事で有名だが、肩こりの改善だけを目的に服用する人も多い。
身体を温めて血流をよくする事で肩こりを改善していく。
散剤やドリンク剤がある。
私も飲んだ事があるが、この散剤があり得ないほど苦い😅
ドリンク剤の方は独特の風味があるものの散剤に比べれば圧倒的に飲みやすい。
ただ、一回分の値段を考えるとドリンクは高い。
風邪に使うなら数日なのでドリンクでも良いが、肩こりに使うとなると1ヶ月は飲み続ける事になり、後者ならコスパ的には散剤を使うのが現実的だろう。
②独活葛根湯
葛根湯に独活(ウド)を足した物。
肩こりというより、四十肩や五十肩に用いる事で有名。
ウドを足す事でどうなるのか調べてみたが、その作用としては、「血管拡張、消炎鎮静、むくみの軽減」が挙げられるそう。
つまり痺れや痛みを止める効果に一役買う程度だが、漢方は複数の生薬が合わさる事でより良い効果を発揮する物であるから、単純な足し算では確かな事は言えない。
③芍薬甘草湯
コムレケアやツラレスという製品で販売されている。
足のつり、こむら返りに有名だが、異常な筋肉の収縮を抑えて痛みを取るシャクヤクやカンゾウ(葛根湯にも配合)に特化した漢方なので、特に痛みが強い時に向いている。
最短6分で効く即効性に優れた漢方なので、肩こりが顕著な時に頓服で服用する選択肢としてお勧めである。
錠剤だけでなく、水無しで飲めるゼリータイプ(グレープフルーツ味)も販売されている。
④コリッシュ
治肩背拘急方という漢方が元になる製品。これは神経質な人の肩や背中の痛みに向くタイプのようだ。
〈注意点〉
ただし、漢方は証を見ると言って、体質にも留意する必要がある。
芍薬甘草湯はあまり気にする必要はないが、葛根湯は体力が中くらいの人に向く漢方で、虚弱な体質の人は胃腸障害などの副作用が起きる事もある。
殆どの人は大丈夫だけど、汗をかき易い人などには向かないとされている。
筋肉の硬直や緊張を緩める薬というのがある。
市販では以下の2つが有名で、どちらも筋弛緩剤+エテンザミド(痛み止め成分)の構成である。
①ドキシン
メトカルバモールという筋弛緩剤が使われている。
こちらは鎮痛補助成分のジベンゾイルチアミンやトコフェロール(血行をよくするビタミンEの一種)も配合されている。
②コリホグス
こちらの主成分はクロルゾキサゾンという筋弛緩剤である。
ドキシンがどちらかと言えば神経の反射を抑えて緊張を取るタイプなのに対し、コリホグスは肉体的に硬直した筋肉をほぐすイメージ。
正直どちらがよく効くとは言えないので、安い方から選んでみると良い。
高額な為、痛み止めや漢方で効かない時の選択肢としてのみお勧めである。
湿布剤
最近第一類から第二類医薬品にスイッチされ、薬剤師がいない土日祝日でも買えるようになったロキソニン(ロキソプロフェン)の湿布剤。
更には温感のロキソニンまで発売された。
湿布は、
◆成分
◆温感or冷感
◆剤形(テープ、パップ、ゲル)
で別れていてかなり種類が豊富な為、知っていないと選びにくい。
どれが自分の症状に合っているのか、ぜひ参考にして頂きたい。
まず、成分は大きく分けて、
①痛みの元を抑えるタイプ
②知覚神経に作用して痛みを取るタイプ
の2つがある。
①は冒頭で挙げたロキソニンの他、
フェルビナク(フェイタス)
ジクロフェナク(フェイタスジクサス)
インドメタシン(バンテリン)
の3つ。
自分に使うものなら普通に買っていくけれど、子供に使うものは慎重に、となる人も多い。
よく効くのは①だが、飲み薬の痛み止めと同じで、強い分副作用も起こりやすい。
以下に該当する人は注意が必要である。
⚫︎胃腸が弱い
⚫︎喘息持ち
⚫︎血圧が高い
②は強い成分ではないので副作用は起こりにくい。
が、逆にかぶれやすいのは①よりも②の方である為、皮膚が弱い人は注意が必要となる。
◆温感か冷感か。
湿布といえば冷たいイメージを持つ人も多いのではないだろうか?
だが、冷感をお勧めできるのはどちらかと言えば打撲やねんざなどの「急性の炎症」である。
肩こりや腰痛のような慢性の症状は、温めた方が効果的なことが多い。
温感の成分(添加物)としては、
⚫︎ノナン酸バニリルアミド
⚫︎カプサイシン
⚫︎ニコチン酸ベンジルエステル
があり、これらが配合されている物の中から選ぶと良い。
なお、持続時間ではボルタレン、効く速さではロキソプロフェン、がより優れている。
◆剤形
①テープ
②パップ
③ゲル
大きく分けてこの3つがある。
パップは冷やす効果が強く、温感の商品があるのはテープとゲルだけである。
今回は肩こりがテーマなので、肩こりにお勧めな温感中心にお勧めを紹介する。
最も剥がれにくいのはテープ剤。
ただし、パップよりかぶれ易い欠点がある。
テープでかぶれるのなら、成分を変える他、ゲル剤を試してみるのも一案。
貼るタイプと、塗るタイプであるゲルとどちらが効くのか尋ねられることも多いが、主成分が同じなら効果に差はない。
ただ、テープは1日一回張り替えれば良かったりするのに対し、ゲルは6時間ごとに塗り治す必要がある。
要するに磁気の力で血行を良くして肩こりを改善する製品である。
150Tなどと表記された数字は、磁力の強さを意味しているし、サイズについては何センチかを見て、服の中に隠れるようにしたいなら長いものをお勧めする。
効果については、正式な学術データが揃っていないとかで、疑わしいとする意見もある為個人的にはお勧めしない。
じゃあどういう時にお勧めかと言えば、
⚫︎高血圧などの持病があって葛根湯や湿布剤が使えない。
⚫︎妊娠中、授乳中で市販薬に不安がある。
⚫︎長く使える経済的なものが欲しい。
確かにこれなら持病や体質を気にする必要もないし、マグネループに関しては繰り返し使える為、経済的である。
だが個人的には、健康面での不安がないなら葛根湯などをお勧めしたい。
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子供でも使える痛み止めと、生理痛特化薬
痛み止めを買いに来たのだが、どうやって選んだら良いのか分からない
と、40代くらいの女性客に声をかけられた事がある。
こういう時のために自分がいるのだし、よほど忙しい時でなければこうして相談してもらえるのは嬉しい限り。
話を聞くと、高校生の娘の生理痛に使うものが欲しい、との事だった。
自分に使うものなら普通に買っていくけれど、子供に使うものは慎重に、となる人も多い。だからこそ私にご相談いただいたのだろう。
しかし高校生という事であれば15歳以上になるので、成人と同じ扱いで良く、どの医薬品でも選ぶ事は可能だと説明した。
痛み止めなら全て生理痛に適応しているし、鎮痛成分は個人差もあるので必ずしもどれが良く効くとは言えない。
が、エルペインという医薬品があり、これは痛みの元を抑えるイブプロフェンと、胃腸や子宮の過剰な収縮を抑えるブチルスコポラミンを併せたもので、生理痛に特化した痛み止めと言える。
①(イブやバファリンなど)通常の痛み止め
→鎮痛成分のみ
②エルペイン
→鎮痛成分+抗コリン成分ブチルスコポラミン
これを紹介したら興味を示されたが、更に訊いてみると娘さんに中学生以下の弟妹もいらっしゃるとの事だったので、子供でも量を調整して飲めるバファリンルナjも合わせて紹介。
すると、「こんなのあるんだ!」とかなり食いついて、これにしますと言ってレジへ向かわれた。
確かに家族全員で使えるのでコスパは良いかもしれない。
しかし一個説明し忘れた事がある。
エルペインやイブに配合されるイブプロフェンは、痛みの元であるプロスタグランジンという物質を抑える為、この物質が仕組みそのものに関与する生理痛に効果的なのだが、
一方でバファリンルナjの成分アセトアミノフェンはプロスタグランジンを抑えずに鎮痛効果を示すもの。
◆イブプロフェン→痛みの元を抑える→生理痛によく効く
◆アセトアミノフェン→痛みの元ではなく中枢に作用→生理痛には効果が弱い
だからこそ副作用が少ないのだし、痛み止めの効果には個人差が大きいとはいえ、生理痛に良く効くのはイブプロフェンの方。
もちろんバファリンルナjの効能欄にも「月経痛」があるが、どうせ使うならよく効いたと思われた方が良いし、特徴をよくわかった上で使ってもらうに越した事はない。
ちょうどレジに呼ばれ、その女性客の会計を担当する事になったので、ついでにその説明もした。隣には当事者の娘さんもいて、母親が「どうする?」と確認すると少し悩み、売り場へもう一度向かわれた。最終的にエルペインを選ばれた様である。
レジではその親子の後に別の客が並んでおり、最低限の説明しかできなかった。親子も遠慮してゆっくり話を聞けなかったのではないか。
売り場にいればエルペインやバファリンルナJ以外の選択肢も提示できたかもしれないのに。
2つは言ってみれば極端な例で、イブプロフェンの単一製剤でもプロスタグランジンを抑える作用はある為、生理痛に充分な効果がある。
単一製剤のリングルアイビーa200やイブなら眠気もなく、生理痛だけでなく頭痛にも使えて経済的である。
そう思うと、最初に全部説明出来なかった自分が悔しい。
餅を食べるとできる?口唇ヘルペスにステロイドを使って良いの?腫れや痒みに効く市販薬
医薬品売り場で作業中、口のところに炎症ができたと訴えてきた年配のご婦人がいた。
「ヘルペスみたいなのができて…」
と言われたので、ヘルペスの薬は薬剤師がいなければ売れない事をまずお伝えした。
お薬の資格を持っていたり、ドラッグストアで働いている人なら知っていると思うが、市販のヘルペス薬であるアラセナは第一類医薬品となっている。
ドラッグストアには、薬剤師と医薬品登録販売者がいて、後者であれば営業中は常駐しているが、前者は病院の空いているような時間帯しか勤務していない事が多い。
一番よく訊かれるのがロキソニンで、これも第一類医薬品。
土日や夜遅い時間にドラッグストアを訪れ、ロキソニンを買おうとして断られた経験のある人も多いのではないだろうか。
登録販売者だけでは法律上、リスクの低い第二類や第三類医薬品しか売れないのである。
そしてこの日は土曜日で調剤薬局はお休みだったし、平日だったとしても、アラセナは「再発治療薬」となる。
つまり、一度病院でヘルペスと診断された事がある人にしか販売できないのである。
そう説明しようとしたのだが、よく話を聞くとどうやらヘルペスではないらしかった。
このご婦人は、意味も知らぬままにヘルペスという言葉を使っていたようである。
「餅とか、カロリーの高いものを食べるといつもできるのよ〜。
いつもベトネベートっていうのを使ってたの」
餅を食べるとできる?そんな事があるのか、とこれは正直初知りだったけれど、これが本当ならヘルペスではなく、別の要因による唇の炎症に過ぎないと考えられた。
ドラッグストアのお客にありがちなもので、商品名はうろ覚えであり、本当に使っていたのがベトネベートなのかどうか定かではない。だが単なる炎症であれば強めのステロイドを使ったベトネベートでいつも治っていたというのは得心がいく話ではあった。
ただベトネベートにも2つあり、ベトネベートNの方は抗菌剤入りである事を説明した。どちらを使っていたのかは流石に覚えていないようだった。
ステロイドには免疫抑制作用がある為、もしヘルペスだった場合は症状を悪化させる可能性がある。まして、strongのステロイドを唇なんて皮膚のデリケートな部分に塗るのは、私の立場としては推奨できない。
もちろん決めるのはお客様ではあるが、ステロイド以外の選択肢も提示させていただいた。
モアリップであれば、炎症を抑えたり、組織を修復する成分が入っているだけなので、もしヘルペスだったとしても悪い影響はない。
治らなくてやっぱりヘルペスかなぁとなったら受診すれば良いだけである。
ただし、無論炎症に対する作用はステロイドに比べて弱い。
痒みが強いとのことだったので、抗ヒスタミン成分が入っているムヒソフトGなども紹介した。
唇用ではないが、デリケートな部位にも使える製品ではある。ただ、剤形として唇には塗りにくいかもしれない。
ベトネベートとどれがいいのかしらと迷っていたが、これがいいと決める権利は私にはない。
結局、塗りやすそうなモアリップを選び、これを使ってみると言って購入された。
原因から学ぶー胃もたれの仕組みと対策ー
胃の症状として、胃痛、胸やけと見てきたが、胃がムカムカする、と言うような「胃もたれ」を訴えるお客様も多い。
〈胃もたれの原因〉
そんな胃もたれの原因は大きく2つある。
①食べ過ぎ、飲み過ぎで消化が追いついていない
②ストレス、加齢により消化機能が衰えている
原因そのものは違っていても、「食べた量に消化が追いつかない」という点では同じなので、どちらも、
●消化を助ける消化酵素
●胃腸の働きを活発にする健胃生薬
が有効となる。
消化酵素には、
ウルソデオキシコール酸(胆汁を分泌して脂肪を消化)
リパーゼ(脂肪を消化)
プロザイム (タンパク質を消化)
ジアスターゼ(でんぷんとタンパク質を消化)
などがある。
健胃生薬には大きく分けて、①香りで胃腸を刺激する芳香性健胃薬と、②味で刺激する苦味性健胃薬とがある。
①芳香性健胃薬
ケイヒ
ニクズク
チョウジ
チンピ
②苦味性健胃薬
ゲンチアナ
ニガキ
香りや苦味で胃腸を刺激し、消化液を出させる働きがある為、胃もたれに効果的な成分である。
苦いからといってオブラートに包むと効果がなくなるとも言われるが、味や香りだけでなく「直接胃腸を刺激する作用」も併せ持っている為、絶対包んではダメというわけでもない。
だが、最大限効果を引き出すにはオブラート無しで服用した方がいいだろう。
〈製品例〉
◆消化酵素単剤のもの
タナベ胃腸薬ウルソ
◆生薬中心のもの
ガストールアクティブ
◆消化酵素や健胃生薬だけでなく、胃を守る成分なども配合した総合胃腸薬タイプ
スクラート
セルベール
パンシロン01プラス
第一三共胃腸薬
太田胃散
etc.
どれを使っても構わないが、あえて使い分けの参考として、
食べ過ぎ飲み過ぎが原因で、既に症状が出た後なら、セルベールやキャベジンなど、消化酵素や健胃生薬にプラスして胃を守る成分も入っている「総合胃腸薬タイプ」
胃腸機能低下による消化の衰えが原因なら、ウルソなど、消化を助けるタイプのものが良いとされる。
(※こちらは症状が出る前でも、出た後で飲んでも良いタイプだが、配合されているのは消化酵素だけなので、既に症状があるなら、どちらかと言えば①の総合胃腸薬をお勧めする)
また、「原因がよく分からない」という人には、
水を飲んで楽になる→①食べ過ぎ飲み過ぎ
お湯を飲んで楽になる→②胃腸機能低下
という判断の仕方もある。
食べ過ぎ飲み過ぎの心当たりもなく、高齢者や、強いストレスのある人の胃もたれなら、②の可能性が高いだろう。
〈総合胃腸薬の比較〉
セルベール
最も安心して使えるシンプルな構成。
※他に安心して使用できる胃腸薬の成分については以下の記事を参照。
https://touhan-diary.hatenablog.com/entry/2021/02/02/194928
スクラート
胃を守る成分の中で最強の効き目スクラルファート配合。
(※散剤の方は消化酵素が入っていない)
緑のパッケージのスクラートSの方は、錠剤散剤共に同じ成分で、
という構成になっている為、主な症状が胃もたれなのであれば、スクラートSの方がお勧め。
Sの方もスクラルファートの配合量は青いパッケージの無印と変わらないので、胃を保護する点においては無印のスクラートに劣らない。
太田胃散
●錠剤→脂質やタンパク質を分解する消化酵素に特化
→脂っこいものを食べて胃がもたれている時におすすめ。
●散剤→芳香や苦味の刺激で胃を元気にする生薬が豊富。
※消化酵素は1種類のみ。
→胃が弱っている時に向く。
(因みに1回分で見ると、成分量は散剤の方に多く配合)
ガストールアクティブ
緑のパッケージのガストールとは全く異なる生薬中心の製品。
太田胃散の散剤の方と同じで、外箱にもある通り、「弱ってもたれている胃」にこちらもお勧め。
第一三共胃腸薬
消化酵素、健胃生薬、胃粘膜を守り炎症を抑える成分などをバランスよく配合。
第一三共胃腸薬プラスの方は、胃の修復を助ける成分や整腸菌をプラスしてある。
第一三共胃腸薬グリーンの方は、どちらかといえば胃を守る方に特化している製品。
〈まとめ〉
これだけ調べてみても、胃腸薬は成分も製品も種類が多くて、店頭での接客は難しいのが現実。
そこで、自分なりにお客様への紹介を一言にまとめてみることにした。
★胃が弱ってもたれているなら
■田辺胃腸薬ウルソ
→「消化機能を助ける消化酵素が入っています」
■ガストールアクティブ
「胃腸を元気にする生薬中心のお薬です」
■太田胃散(散剤)
「錠剤とは成分が違って、苦味や香りで胃を刺激する生薬が豊富に入っています」
■スクラートS胃腸薬
「胃を守る成分の中でもトップクラスのスクラルファートに、胃を元気にする健胃生薬を豊富にプラスしています」
★食べ過ぎて胃がもたれているなら
■田辺胃腸薬ウルソ
「脂っこいものを消化する消化酵素が入っています」
■太田胃散(錠剤)
「消化を助ける消化酵素の種類が豊富に入っています」
■第一三共胃腸薬プラス
「消化を助ける成分や胃を守る成分がバランスよく入っている本シリーズの中でも、整腸菌もプラスされている商品になります」
まるで売り込みのようになってしまったが(^_^;)、このように自分の職場の推奨品なども加味した上で、どれをお勧めするか選んでおくと、いざ訊かれたときにすぐ答えられるので良いかもしれない。
原因から学ぶー胸やけの仕組みと対策ー
胸やけ
よく聞くような気もするが、ドラッグストアの店頭で、お客様がその言葉を使ってくるとは限らない。
「食べたものが胸の途中で停滞しているような…」
「喉に酸っぱいものが込み上げてくるような…」
そんな事を言われたら胸やけかな、と思ってご案内していいだろう。
〈胸やけの仕組み〉
そんな、酸っぱいものが込み上げるような感覚の胸やけが生じる原因はと言えば、
普段は閉じている食道括約筋(胃と食道のつなぎ目)が緩んで、腹圧が上昇し、胃酸を含んだ胃内容物が逆流する事による。
食道が酸にさらされる事で、
胸やけ(=胃食道逆流症)
となる。
食べてすぐ横になる習慣があったり、前屈みになって仕事をしている人がなりやすい。
特にそういう習慣がなくても、加齢によって食道括約筋が緩みやすくなって生じる事もある。
ともかくも胃酸が原因になるわけなので、有効となるのは、胃酸を中和してくれる「制酸成分」
成分名を全て覚えられなくても、
カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウムなどとついている成分は大体そうだと思って間違いない。
ただ、合成ヒドロタルサイトなど、上記が名前についてなくてもアルミニウムを含む制酸成分だったりするため、そこだけは注意が必要だ。
具体的には以下のような成分がある。
ケイ酸アルミン酸マグネシウム
合成ヒドロタルサイト
水酸化マグネシウム
ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート
水酸化アルミニウムゲル
炭酸水素ナトリウム(重曹)
炭酸マグネシウム
沈降炭酸カルシウム
ボレイ
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
また、制酸剤を含む胃腸薬の詳しい留意事項については、以下の記事も参考になるかもしれない。
https://touhan-diary.hatenablog.com/entry/2021/02/02/194928
製品例としては、
サクロンS
パンシロンAZ
などが候補となる。
もちろん、キャベジンやスクラートなどの総合胃腸薬にも制酸成分は入っている為、どちらを使っても構わない。
パンシロンAZ
アズレンスルホン酸ナトリウム6
Lグルタミン900
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム600
ロートエキス30
炭酸水素ナトリウム1800
重質炭酸マグネシウム180
沈降炭酸カルシウム540
サクロンS
銅クロロフィリンカリウム90
水酸化マグネシウム1050
無水リン酸水素カルシウム1650
ロートエキス30
MMSC150
炭酸水素ナトリウム700
炭酸マグネシウム250
沈降炭酸カルシウム1200
ロートエキス90
ソヨウ30
センブリ30
ビオジアスターゼ24
リパーゼ15
そもそも制酸剤の種類の量がそれぞれ違うので、どれが一番良く効くのかというのも難しいところ。
◆胃もたれや胃痛などもある場合
→キャベジンやスクラートなど総合胃腸薬
◆胸やけだけで、他に目立った症状が見られない時
→サクロンS、パンシロンAZなど制酸成分中心のもの
という風にあとは値段で選ぶと良いだろう。
セルベールの効能にも胸やけの記載はあるが、テプレノンは胃粘膜を増やして胃を守るもので、酸を中和する効果はない。
特に胸やけが顕著な時は強い効果は望めないと考えられる。
セルベールがお勧めなのはどんな人か、また胃痛についてはこちらの記事を参照。
原因から学ぶー胃痛の仕組みと対策ー
私個人はあまり経験がないのでイメージしにくいけれど、胃の症状としては主に、
胃痛
胸やけ
の3つがあると思う。
胃薬をご案内するには、ざっくりとでもいいから仕組みを理解していることが必要だと個人的には思っている。
まずは胃痛の仕組み
多くはストレスが原因だが、
きっかけは何にしろ、自律神経の乱れで起こる事が多い。
◆副交感神経→過剰な胃酸分泌
◆交感神経→胃の血管を収縮→胃血流を減らす→(胃を守る)胃粘膜分泌を減らす
要するに胃痛とは、
胃酸が胃の粘膜を傷つけている状態。
原因が胃酸なら、対策は主に2つ。
①胃酸の分泌を抑える
②胃酸から胃を保護する
①の胃酸分泌を抑える市販内での選択肢としては、
m1ブロッカー(ピレンゼピンなど)
抗コリン薬(ブチルスコポラミンなど)
の3つ。
簡単に言えば、自律神経のせいで生じている胃酸分泌なので、自律神経を伝達する物質をブロックする成分となる。
この3つは、それぞれブロックする受容体が異なるだけで作用は基本的に同じと思っていいだろう。
ただこの中で最もよく効くのはh2ブロッカーになるので、症状が強いならh2ブロッカー、と覚えておくといいかもしれない。
例としては
m1ブロッカー:ガストール
抗コリン薬:ブスコパン
がそれぞれ代表的。
ただし、ガスター(h2ブロッカー:ファモチジン)は第一類医薬品で、薬剤師がいないと買えない製品。
そういう場合はガストール(m1ブロッカー:ピレンゼピン)を代用として購入する選択肢もあるだろう。
〈成分〉
ピレンゼピン47.1mg
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム900mg
炭酸水素ナトリウム1200mg
ビアジアスターゼ30mg
ガスター10がファモチジン単剤なのに対し、ガストールは胃保護修復成分や消化酵素もプラスされているので、効果の比較は難しいとも言われる。
また、同じピレンゼピン製剤としてパンシロンキュアSPがある。
〈成分〉
水酸化マグネシウム450mg
合成ヒドロタルサイト780mg
沈降炭酸カルシウム900mg
アルジオキサ150mg
ピレンゼピン46.9mg
炭酸水素ナトリウム240mg
チンピ末300mg
ピレンゼピンの量は殆ど変わらないし、胃保護成分の種類は多い代わりにそれぞれの量は少ない。
ガストールと違って消化酵素がなくて、代わりに胃を元気にする生薬チンピが配合されている。
どちらが効くというのはやはり難しい問題なので、あとは店頭の値段などで選ぶしかない。
抗コリン薬ブスコパンのブチルスコポラミンは、生理痛専用薬エルペインにも配合されていて、胃腸や子宮の過剰な収縮を抑える成分でもあるため、キリキリするタイプの胃痛に効果的と言える。
使い分けとしては、
◆食べすぎ、飲み過ぎ、ストレスなど複合的な要因があって、症状が強いならガスター10
◆薬剤師がいない時、胸やけや胃もたれなど胃痛以外にも症状がある時はガストール又はパンシロンキュア
◆主にストレスが原因ならブスコパン
で充分だろう。
次に、②の胃粘膜を保護修復する成分。
前回も紹介したが、これがかなり多く出回っている。
代表的なものとして、
スクラルファート:スクラート
テプレノン:セルベール
MMSC:キャベジン
などがある。
この中で最も胃の不調に対して推奨できるのは
となる。
①の受容体ブロッカーの中でも、第一類医薬品で最も強い作用を誇るガスター10と比べても劣らないとされているほど。
スクラルファート1500mg配合なのはシリーズ共通なので、どれが効き目が劣るということはないが、緑のスクラートSは生薬中心で、どちらかと言うと胃もたれが強い時にオススメかもしれない。
胃痛を含む症状が強めな時は青のスクラート、と覚えておくといい。
ただし、青のスクラートは錠剤と散剤で成分が異なり、消化酵素が配合されているのは錠剤のみとなっているので、そこは注意が必要。
ざっくりと成分を比較すると、
●スクラート錠剤→スクラルファート+他胃保護成分+制酸+消化酵素
●スクラート散剤→スクラルファート+他胃保護成分+制酸
(様々な胃の不調に特化)
※どちらもロートエキス配合。
●スクラートS→スクラルファート+健胃生薬7種+制酸+消化酵素
(特に胃もたれに特化。
錠剤と散剤の違い無し)
●スクラートG→スクラルファート+胃保護成分+健胃生薬2種
(水無しで飲みたい人に)
次に、前回も紹介したセルベール(テプレノン)
スクラルファートのように強い成分ではないが、特に注意事項がなく、安心して使える成分なので、症状がそれほど酷くないならまずこれから試してみるのもいいだろう。
痛み止めや風邪薬などで胃が荒れるという方は、セルベールと一緒に服用することも可能。
成分が多く配合される他の胃腸薬は、風邪薬の効き目を邪魔する可能性もあるが、セルベールにはそのような心配はないので安心だ。
キャベジンの主成分・MMSC(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)
この成分自体はテプレノンと同じように注意の要らないものではあるが、キャベジン自体が総合胃腸薬であり、以下のように様々な種類の成分を配合しているため、風邪薬などとの併用はあまりお勧めしない。
MMSC炭酸水素ナトリウム
炭酸マグネシウム
沈降炭酸カルシウム
●ロートエキス
ソヨウ乾燥エキス
センブリ末
ビオジアスターゼ
リパーゼAP12
ご覧のように総合的な成分の胃薬なので、胃痛•胃もたれ•胸やけといった様々な胃腸症状に有効なのは違いない。
ただし、総合胃腸薬としてよく効くのはスクラートの方。
とにかくよく効くものが欲しい人→青のスクラート
様々な症状に効くものが欲しい人→
キャベジンなど総合胃腸薬
マイルドなものが欲しい人、痛み止めと併用したい人→セルベール
ひとくちに胃痛と言っても、様々な選択肢があることがお分かりいただけただろうか。
<!-- admax -->
<script src="https://adm.shinobi.jp/s/21ae2dc3151e33125e344a93
次回は胸やけについて書きたいと思う。
【解説】安心して使える胃薬と要注意な胃薬
胃薬の成分、記事を書くに当たって私自身改めておさらいしたが、やっぱり多過ぎる(⌒-⌒; )
普段自分でも使っている人ならいいのだろうが、胃薬を買わない人からしたら、混乱するのも当然だと思う。登販試験の時にも勉強したはずだけど、いざとなると抜け落ちていてパニックになりそうである。特に、
私、〇〇の治療をしてるんだけど、大丈夫かしら?
とか訊かれたときに、どうだったっけ?となるのが怖い。
何の成分なら大丈夫で、何が要注意の成分だったか?
それらが入っている、又は入ってないのはどの製品だった?
煩雑なものは整理が必要だ。
今回は、成分を危険なものとそうでないものとに分別してみる。
【注意が必要な成分】
◆ロートエキス
→母乳が出にくくなる事がある。
◆ブチルスコポラミンなど抗コリン成分
◆制酸剤(カルシウム・ナトリウム・アルミニウム・マグネシウム)
→過剰症あり。
アルミニウムは透析中不可の成分。
◆ スクラルファート(胃粘膜保護修復成分)
→透析中だったり、腎機能が低下している人は注意。
◆カンゾウ(胃粘膜保護修復成分)
カンゾウを含む『大正漢方胃腸薬』(安中散と芍薬甘草湯の漢方合剤)
→長期服用により偽アルドステロン症(症状として、高血圧やむくみ)になる恐れがある。
→これも副作用がある。頓服使用を推奨。
◆オキセサゼイン(局所麻酔成分)
→比較的安全な成分だが、抗コリン剤と同じような副作用が起こる事もある。
ざっと書き出すとこれだけの留意事項がある。
一見多いようだけれど、まあ念頭に置いておくべきはロートエキスや抗コリン剤と、カンゾウくらいだろうか。
カンゾウは確かに、血圧の高い人は他のカンゾウ含有剤との併用には気をつけた方が良い。
生薬中心のものや、漢方系は作用が緩和で安心だと勘違いしているお客も多いのでその点は注意が必要かもしれない。
緑内障や前立腺肥大などの可能性があるなら、ロートエキスや抗コリン剤を配合していない製品は多いので、不安ならそちらをお勧めすれば良い話である。
(製品例は後述する)
あとは、アルミニウム製剤が透析中不可、というのは繰り返し習った記憶があると思うが、そもそも透析治療を受けなければならないような人が市販薬を買いに来る事も稀だろう。
カルシウム系は、先日紹介したザ・ガードやパンシロンビオリズムにも入っているくらいだ。
その他、過剰症に注意が必要なものは多いが、用法用量を守れば特に問題はない。
【特に注意の要らない成分】
◆健胃生薬(センブリ・ケイヒ・カルニチン等)
◆消化酵素(ビオジアスターゼ・ジアスメンジアスターゼ・リパーゼ・セルラーゼ)
◆消泡剤(ジメチルポリシロキサン)
◆胃保護修復成分のうち、テプレノン/MMSC/アルジオキサ/銅クロロフィリン
逆に上記のものだけで構成されている製品なら、健康な人が日常的に服用したとしても問題ない胃腸薬と言える。
上記を踏まえて、比較的安心して使える胃腸薬を紹介。
①セルベール
セルベールプレミアム
このシリーズの成分構成としては、
テプレノン
ソウジュツエキス
コウボクエキス
が基本で、プレミアムの方は消化酵素の
リパーゼがプラスされている。
ロートエキスは勿論、他の注意の要る成分は入っていないので、緑内障、前立腺肥大症の人や授乳婦にも使用できるし、風邪薬や解熱鎮痛剤とも併用が可能である。
ある程度胃腸症状が強い場合には、h2ブロッカーのガスター、スクラルファートなどに比べて効果は劣るし、制酸剤は入ってないので、胸焼けが顕著な時もお勧めはしない。
胸やけがなく、胃の痛みもそこまでひどくない人に対する有効性は評価されている。
胃のもたれが強いならセルベールプレミアムがお勧めだが、値段を高いと感じるならセルベールの方で充分だろう。
②田辺胃腸薬ウルソ
これも消化酵素のウルソデオキシコール酸が入っているだけなので、特に心配するべき事はない。
胃の機能が低下して胃もたれが起こっているような時にお勧めの医薬品である。ツイッターでの評価も高い。
③パンシロンソフトベール
これはセルベールの処方に、胃粘膜保護成分の一つで口臭にも効果があるとされる銅クロロフィリンナトリウムを足したもの。
因みに、銅クロロフィリンナトリウム単剤で、口臭除去の商品として売られているサクロフィールという商品もある。
胃粘膜保護成分には違いないので、マイルドながら二日酔いにも効能があるが、配合量はパンシロンソフトベールの3分の1以下に過ぎないので、胃腸薬としてはあまり期待できないだろう。
口臭対策がしたいだけならこちらで充分。
④ガストールアクティブ
ケイヒ末
ソウジュツ乾燥エキス
ホップ乾燥エキス
カンゾウエキス
アズレンスルホン酸ナトリウム
嗅覚や味覚に訴えて胃腸の働きを活発にする健胃生薬3つ+抗炎症成分2つ、という構成なので、高血圧でなければ特に気をつける要素はない。
⑤スクラートS胃腸薬
パンシロンアクティブ
パンシロンアクティブは、④と同じようにアクティブとつく生薬配合の製品だが、消化酵素や制酸剤も追加されているので、全く違う成分構成の医薬品である。
スクラートSは、パンシロンアクティブ
にスクラルファートと、もういくつか生薬を足したようなものと考えれば良い。
この2つについては、制酸薬もカンゾウも入っているし、全く注意が要らないわけではないのだが、他のパンシロンシリーズや青のスクラートに比べれば安心して使用でき、風邪薬との併用も可能だとされる。
ロートエキスが入っていないので、授乳中も可能である。
次のブログでは、要注意な成分配合のものも含め、どういう症状の時にどういうものが最もお勧めなのかを解説したいと思う。
最後までお読みいただきありがとうございました。